医療機関の賃上げ・物価高騰支援、 一時金の先にある「ベースアップ評価料」への移行
病院・診療所向け 制度解説 / 2026年度
医療機関の賃上げ・物価高騰支援、
一時金の先にある「ベースアップ評価料」への移行
2026年掲載|厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」をもとに解説
はじめに ─ 物価高騰と賃上げ、医療現場を襲った二重の負担
2025年から2026年にかけて、光熱費・食材費・医薬品材料費の高騰と、人材確保のための賃上げ圧力が同時に医療機関を直撃しました。診療報酬は公定価格であるため、一般企業のように価格転嫁で対応することができず、経営への影響はより深刻なものになりがちです。
こうした状況を受け、令和7年度補正予算(2025年12月成立)で、病院・診療所・薬局・訪問看護ステーションを対象にした「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業」が創設されました。すでに交付申請は締め切られていますが、対象になった施設にとっては、今も実績報告や今後の対応が続いているテーマです。
制度の全体像:4つの事業
本事業は、対象施設と目的に応じて4つの事業に分かれています。
| ①病院賃上げ支援事業 | 令和8年2月1日時点でベースアップ評価料を届出済みの病院が対象。使用許可病床数×84,000円を支給し、確実な賃上げに充てる |
|---|---|
| ②病院物価支援事業 | 原則すべての病院が対象。基礎額は病床数×111,000円で、救急車受入件数・全身麻酔手術件数・分娩件数に応じて500万円〜2億円の加算あり |
| ③診療所等賃上げ支援事業 | 都道府県が実施。有床・無床診療所、薬局、訪問看護ステーションが対象で、ベースアップ評価料の届出(または届出の誓約)が条件 |
| ④診療所等物価支援事業 | 都道府県が実施。原則すべての有床・無床診療所、薬局が対象 |
出典:厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」。①②は国(厚生労働省)、③④は都道府県が実施主体です。
支給額の目安
※ 金額は令和7年8月1日時点の使用許可病床数等を基準とした標準的なケースです。加算や特例により実際の金額は施設ごとに異なります。
一時金の先にあるもの:「ベースアップ評価料」への移行
この支援事業の最大のポイントは、あくまで令和7年12月分から令和8年5月分までの6か月間をカバーする一時的な措置だという点です。厚生労働省は、この6か月間で引き上げた賃金水準を、6月以降も維持することを施設に求めています。
また、給付金の交付を受けた施設は、実際に賃金改善へ充てたことを示す「実績報告」の提出が必要です。病院分は令和8年7月1日から受付が始まっており、8月1日を目安に報告するよう案内されていますが、間に合わなかった場合も順次報告するよう案内されています。都道府県が窓口となる診療所等分についても、各都道府県の案内に沿った報告が必要です。
今、確認しておきたいポイント
給付金の交付を受けた施設は、賃金改善の実績報告が必須です。未提出の場合、返還を求められることがあります。心当たりのある施設は早めに確認しましょう。
一時金で引き上げた賃金水準は、6月以降もベースアップ評価料等を通じて維持することが前提です。一時的な引き上げで終わらせない仕組みづくりが必要です。
特に診療所・薬局では、令和8年度改定後のベースアップ評価料の届出(または届出の誓約)が支援の条件になっていました。今後の診療報酬対応としても、届出状況を一度整理しておくと安心です。
弊社として感じていること
今回の支援事業は「一時金でとりあえず賃上げを後押しし、その後は診療報酬の仕組みで恒久化する」という、やや複雑な二段構えの制度でした。申請自体は締め切られていますが、実績報告や賃金水準の維持といった「その後の対応」を見落としてしまうと、思わぬ返還リスクにもつながりかねません。
賃上げの原資を確保し続けるためには、公的な支援だけでなく、施設運営そのもののコスト構造を見直すことも欠かせません。廃棄物処理費など、日常的にかかっているコストを見直すことも、経営体力を維持するための選択肢のひとつになると考えています。
まとめ
Summary
- 令和7年度補正予算で、病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション向けの賃上げ・物価高騰支援事業が実施された
- 交付申請の受付はすでに終了(病院分は令和8年6月12日締切)
- 支援は令和7年12月〜令和8年5月分の一時的な措置。6月以降は「ベースアップ評価料」という診療報酬の仕組みに引き継がれる
- 交付を受けた施設は、賃金改善の実績報告が必須
- 賃金水準の維持と、ベースアップ評価料の届出状況の確認が今後の対応ポイント
当社は補助金・給付金申請のサポートは行っておりません。詳細・最新情報は厚生労働省または都道府県の公式サイトでご確認ください。
関連製品のご案内
遠赤外線電子イオン熱分解装置
廃棄物を施設内で処理することで、廃棄物の搬出コストや作業負担を軽減できる設備です。賃上げの原資確保に向けたコスト構造の見直しの一環としてもご検討いただけます。
※ 導入効果は施設の運用状況により異なります。詳細はお気軽にお問い合わせください。